私は前職では一部上場企業の経営企画・経理企画で事業計画や事業予算編成を担当していましたので、損益分岐点分析は得意です。

今日は法律事務所の経営に欠かせない損益分岐点分析の話をします。

ひとり事務所だろうと複数人の弁護士が所属している事務所だろうと、法律事務所の経営を考えた場合、あまりにも損益分岐点分析をしていない事務所が多すぎます。

損益分岐点とは、売上と経費が釣り合う点、つまり損失も利益も出ない売上高のことを言います。

簡単に言うとプラスマイナスゼロの売上高のことです。

損益分岐点は下記の計算式で簡単に求めることができます。

損益分岐点=固定費÷(1-変動比率)

例えば、月間の固定費が100万円、売上をあげるのにかかる変動比率が20%の事務所の場合、100÷(1-0.2)=125となり、125万円の売上高がないと赤字になってしまうことがわかります。

固定費型の法律事務所

ビジネスには変動比率が高い変動費型のビジネスと、変動比率の低い固定費型のビジネスがあります。

法律事務所のビジネスは粗利率が高く、変動比率が低い固定費型のビジネスとなります。

経費のほとんどは固定費で、売上を上げるために使う変動費は、広告宣伝費と印紙代・通信費などくらいではないでしょうか。

固定費型のビジネスの特徴は、売上が損益分岐点を上回ると利益が大幅に増加するという点です。

共に損益分岐点が125万円の下記の固定費型・変動費型の会社で説明します。

A社は、固定費100万円、変動比率20%の固定費型の会社です。

B社は、固定費25万円、変動比率80%の変動費型の会社です。

どちらの会社も損益分岐点は125万円です。

仮にどちらの会社も売上が好調で、損益分岐点を上回る200万円の売上になったとします。

この時の両社の利益は、どうなるでしょう。

利益は、利益=売上高-固定費-(売上高×変動比率)の計算式で計算できます。

A社は、200-100-(200×0.2)=60万円となります。

B社は、200-25-(200×0.8)=15万円となります。

両社とも同じように損益分岐点を75万円ほど上回る売上高なのに、利益には大きな違いが出ることがわかります。

つまり固定費型のビジネスは、損益分岐点を越えると利益の増大幅が大きくなるのです。

では、仮に125万円の損益分岐点に対し、75万円ほどしか売上がなかった場合はどうなるでしょう。

損益分岐点を下回っているのでどちらの会社も赤字になりますが、赤字額は下記の通り大きく違ってきます。

A社は、75-100-(75×0.2)=▲40万円となります。

B社は、75-25-(75×0.8)=▲10万円となります。

つまり、固定費型のビジネスは、損益分岐点を下回ると赤字が大きく膨らむということです。

このように固定費型のビジネスは、ハイリスク・ハイリターンなのです。

弁護士大量時代以前の法律事務所は、損益分岐点を上回る利益を得ることが容易であったため、法律事務所の経営がハイリスク・ハイリターンなどとは考えてもいなかったと思いますが、損益分岐点分析から見ると、法律事務所の経営はハイリスク・ハイリターンなのです。

固定費型のビジネスのポイント

では、固定費型のビジネスでは、どのような点に注意して経営していくべきかを話します。

まず初めに、固定費型のビジネスでは、とにかく顧客獲得に注力するのが有効な戦略となります。

そのためには、値引きや無料相談なども有効な手段となります。

とにかく損益分岐点を上回らないと大赤字になってしまいますので、顧客の確保が最優先課題となります

そして損益分岐点を上回ったら、利益の拡大幅は大きくなりますので、さらなる顧客獲得に向けて積極的に投資していくことが有効となります。

もちろん無駄な経費の削減などは常に意識する必要はありますが、固定費型のビジネスでは、とにかく顧客獲得に注力することが重要になります

顧客を獲得するための戦略、あなたの事務所はお持ちですか?

価格戦略、プロモーション戦略、顧客獲得を目的として作られていますか?

一度じっくり検討してみてください。

この記事があなたの参考になれば幸いです。

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